先週木曜、金曜と肝臓学会に参加してきました。
C型肝炎については、前回のブログで書きましたが、今回はB型肝炎についてです。
僕が研修医だったころ、B型肝炎に対する治療というのは、ステロイド離脱療法という方法と、インターフェロン短期治療しかほぼありませんでした。
それから、10年ちょっと。
B型肝炎の治療は全く変わってしまいました。
ラミブジンという抗ウイルス剤の飲み薬が出てきて、その後、アデホビル、エンテカビルと相次いで、飲み薬の新薬が登場することによって、ほぼ治療は画一化されてきたのです。
もちろん、治療のタイミングとか、適応の判断などの専門医としてのスキルは必要ですが、10年前に比べると、本当に患者さんにとっては、格段の進歩を見せています。
では、そんな中、今は何が問題か。
昔の日本のB型肝炎は、いわゆる母子感染を中心とした、親の世代から、子供へと幼少期の感染が大人になってからも、治療が必要になるということが大部分でした。
大人になってからのB型肝炎への感染、いわゆる急性肝炎の場合は、劇症肝炎になってしまう場合はまれにありましたが、それ以外は、急性肝炎だけで、治癒に向かうという経過がほとんどだったのです。
しかし、B型肝炎のなかにも、遺伝子の違いがあることが分かり、B型肝炎の遺伝子型Aとか、遺伝子型Bなどと呼ぶようになりました。
従来、日本にあったB型肝炎は、遺伝子型BとCが大部分で、遺伝子型Aというのは欧米に多い型です。
今、この遺伝子型AのB型肝炎が問題になってきています。
何が問題かというと、遺伝子型Aの場合は、大人の急性肝炎からでも、高頻度に慢性肝炎になってしまうのです。
そのため、遺伝子型BやCよりも、成人の間で感染が広がってしまう危険性が高いのです。
実際、どうやって広がっていくかというと、これは性交渉が最大の原因となります。
つまり、今、B型肝炎は、性行為感染症として、新たに広がり始めているのです。
この辺の対応をどうするか、B型肝炎に対するワクチン接種の重要性などを絡めて、学会では、演題が多く出ていました。
基本的に、肝炎というものは、あまり症状が出ません。
気付かないうちに、感染が蔓延する可能性があるのです。
感染の心配がある方は、是非、早めに保健所、近くのかかりつけの先生に一度、ご相談してみてください。