先日,行ってきた家庭医療学会のセミナーの内容を少し自分なりにまとめています.
それらをシリーズでアップしていきたいと思います.
まず第一弾は「旅行医学」です.
旅行医学についてのセミナーは,東京厚生年金病院内科の溝尾 朗先生に講義してもらいました.
まず,旅行医学の目的ですが,
・「安全」な旅行に必要な知識と手段の提供
・「快適」な旅行に必要な知識と手段の提供
・「健康増進」「QOLを高める」旅行のサポート
→つまり,旅行医学は予防医学のひとつである.
シリーズ第一回目は,上記のうち
・「安全」な旅行に必要な知識と手段の提供(前編)
です.
旅行を安全にすごすためにどうすればいいか?
なんとなく,海外で怖いのは,感染症にかからないかというのがまず思い浮かびますよね.ですが,実際にさまざまな国が取った旅行関連死の統計を見てみると,実は心筋梗塞とか脳梗塞とか,病気による死亡が圧倒的に多くて,感染症による死亡というのは,ごく少数なんですよね.ですから,やはり持病を持っている人は特に,旅行中も疾病に「注意」ということになるのです.
日本人が,海外で旅行中に「胸が苦しい」とか「どうも,脳梗塞ではないか」といった状況になったとき,どうするでしょう?
やはり,旅行中で英語も出来ないし,日本人のいるクリニックへなんて考えますよね.保険に入ると,日本人Drがいるクリニックを紹介されたりしますし.
では,同じような発作が日本で起きたら,どうしますか?多分,救急車を呼びますよね.
海外でも是非,そうしましょう.
心筋梗塞とか,脳梗塞というのは,発症してから,いかに短時間で治療を開始するかがとても大事です.ですから,日本人Drのいるクリニックに行って,診察を受けて,それから専門病院に転送してなんていう時間はありません.是非,海外でも救急車を呼びましょう.英語なんてしゃべれなくても,なんとかなります.
日本で,日本語をしゃべれない外人の患者さんもなんとかなりますから.
さて,では本当にそうなってしまった時に,より確実に対応が出来るようにするには,どういう準備をしておきましょうか.


(1)英文診断書を携帯する
これは,自分のこれまでの病気や,今内服している薬,既往歴などを,英語で書いたものを持ち歩こうというものです.さすがにこれは,自分で誰が見てもわかるようなものを作るのは難しいでしょうから,かかりつけのDrに相談して,作成してもらうことをお勧めします.
(2)アラートカードを持参しよう
これは,自分の身に何か起きたときに,見てくれた人がすぐ確認できるように,財布に入れておくカードです.
例えば,「重症アスピリン喘息で2度死にかけています」とか,「糖尿病でインスリン治療をしています」などをぱっと見てわかるようにカードにしておくものです.
海外では,倒れている人を見たら,財布をチェックするというのがセオリーのようです.
適応としては,
薬物アレルギー(特にアナフィラキシー),アスピリン喘息,ペースメーカー使用者,インスリン使用者,人工透析患者,在宅酸素療法患者などなど
(3)持参薬
持病を持っていて,薬を飲んでいる方への注意事項です.
a) 持って行く薬の量は,旅行の日数+1週間分(何が起こるかわかりませんからね)
b) 飛行機の場合,必ず機内に持ち込む(荷物に入れておくと無くなることもある)
c) 発作の時の薬も忘れずに
d) 英文の処方薬リストを持参(旅行先の病院で処方してもらう可能性を考えて)
次回は,
・「安全」な旅行に必要な知識と手段の提供(後編)
を,お送りします.