最近、ニュースでも報道されている「麻疹(はしか)」について、当院の診察室でも患者さんからご不安の声をいただくことが増えてきました。現在、当院のある神奈川県、東京都を中心に関東エリアでも感染者の報告が続いています。
今回は前編として、麻疹の基本的な症状と、ご自身が「免疫(抗体)」を持っているかどうかの見極め方について解説いたします。
1. 麻疹(はしか)の強力な感染力と症状
麻疹は、非常に感染力が強いウイルスです。インフルエンザや新型コロナウイルスと異なり「空気感染」をするため、すれ違ったり、患者さんが退出した後の空間にいたりするだけでも感染するリスクが高く、免疫がない人がウイルスに接触した場合、ほぼ100%発症すると言われています。
【主な症状】 感染すると、約10〜12日間の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。
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初期(数日間): 38度以上の発熱、咳、鼻水、目の充血・目やになど(風邪とよく似ています)
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中期: 口の中に白い斑点(コプリック斑)が出現し、一度熱が下がった後、再び高熱が出るとともに、全身に赤い発疹が広がります。
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合併症のリスク: 肺炎や脳炎などを引き起こすことがあり、特に大人になってから感染すると重症化しやすい傾向があります。
2. もし実際に感染してしまったら、どうなるの?
「もし自分がはしかになってしまったら…」と不安に思う方も多いと思います。麻疹と診断された場合、以下のような流れになります。
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特効薬はなく、対症療法が中心 麻疹ウイルスに直接効く抗ウイルス薬はありません。解熱剤や水分補給などで症状を和らげながら、ご自身の免疫力で回復を待つことになります。
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自宅での隔離(外出自粛) 周囲への感染を防ぐため、「解熱後3日を経過するまで」は出勤や登校ができず、ご自宅での療養(隔離)が必須となります。
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保健所との連携 保健所へ発生届を提出後、感染拡大を防ぐため、保健所からの行動歴の聞き取り調査にご協力いただくことになります。
3. 【年齢別】あなたは抗体を持っていますか?
「自分ははしかにかかるのか?」というご不安に対しては、「現在の年齢」が一つの大きな目安になります。
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現在55歳以上の方(概ね1972年以前の生まれ) この年代の皆様は、子どもの頃に自然に感染している方がほとんどです。自然感染による免疫は非常に強力で一生涯続きます。そのため、ほぼすべての方が抗体を持っており、重症化するリスクは極めて低いため、過度にご心配いただく必要はありません。
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現在26歳〜54歳くらいの方 現在、最も抗体を持っていない可能性が高いのが、この世代です。ワクチンの定期接種が1回だけだったり、社会的に接種控えがあった時期と重なったりしているため、抗体が落ちてきている方が多くいらっしゃいます。
4. 【よくあるご質問】風疹(ふうしん)のワクチンとは違うの?
「妊娠希望の時に風疹の検査をしたから、はしかも大丈夫」と勘違いされているケースがよくあります。「はしか(麻疹)」と「風疹(三日ばしか)」は全く別のウイルスです。
現在、主に使われているのは両方を同時に予防できる「MR(麻しん風しん混合)ワクチン」です。これを接種した方は麻疹の免疫も獲得できています。 しかし、過去に自治体の制度などで「抗体検査だけ」を受けて「問題なかった」という方は、「風疹の抗体」のみを調べた結果であるケースが非常に多いのでご注意ください。
【確認のポイント】母子手帳や検査結果のどこを見ればいい?
① 母子手帳の「予防接種の記録」を見る場合 予防接種のページを開き、以下の記載が2回あるか確認してください。
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安心な記載:「麻しん(はしか)」「MR(麻しん風しん混合)」「MMR」
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注意が必要な記載:「風しん」のみの記載だった場合、麻疹の予防にはなっていません。
② 過去の「抗体検査の結果用紙」を見る場合 検査項目の名称をしっかりご確認ください。
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安心な記載:「麻疹(または 麻しん)抗体」という項目があり、基準値を満たしている。
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注意が必要な記載:「風疹(または 風しん)抗体」という項目しかない場合は、麻疹の抗体があるかは分かりません。
「自分の記録を見たけれど、はしかの免疫があるのかよくわからない」という場合は、受診の際に母子手帳や当時の検査の控えをご持参いただければ、診察室で一緒に確認させていただきます。
後編では、気になるワクチンの現状や、疑わしい症状が出た際の当院からのお願いについてお話しします。
