昨日、ラグビーの協会の会議に出てきました。
そこで、脳震盪についての話がありました。もちろん、他の競技では、異なってくるのですが、これくらい厳しく取り扱いしていかなければならないんですよということは、周知する必要があると思いますので、このブログにも書きたいと思います。
ラグビーにおける脳震盪の扱い
これまで、「脳震盪を起こした場合」には、ラグビーの試合中、即座に退場しなければなりませんでした。今回、よりプレーヤーの安全を重視するという考え方から、「脳震盪の疑い」でも退場となるように変更となっています。
それぞれのチームの事情から、脳震盪で退場、もしくはその後選手が出場停止となることで、様々な影響が出るかとは思いますが、その選手の人生は、そこで終りではありません。セカンドインパクトシンドロームという言葉もありますが、脳震盪のダメージが残っている間にもう一度脳震盪を起こすと、極めてシビアな状態になることがあります。また、脳震盪を繰り返すと、将来になって、様々なダメージが出てきます。
そこをキモに銘じて、指導者はしっかりと選手の安全を第一に考えて欲しいものです。
で、僕ら医療従事者がどうすべきか、またラグビーに関わる人たちがどうすべきかを再確認するために、ここに備忘録として、昨日の会議で聞いてきた話をざっとまとめておこうと思います。
まず、試合中(もしくは練習中)に「脳震盪/脳震盪の疑い」を発見したら!
1.「脳震盪の疑い」の所見を再度確認します
2.「脳震盪の疑い」の症状を確認します
3.バランステストを行います
この1-3の順番で確認して、一つでも異常があれば、「脳震盪の疑い」と判断します。
すなわち、この判断がついたら、退場→医師の診察/医療機関受診→段階的競技復帰です。
さて、では、どういったことをもって、「脳震盪の疑い」と見るのか。
上記1の「脳震盪の疑い」の所見とは。
頭部、顔面、頚部あるいはほかの部位への衝撃の後で、以下の所見がみられる。
・意識消失
・ぼんやりする
・嘔吐
・不適切なプレーをする
・ふらつく
・反応が遅い
・感情の変化(興奮状態、怒りやすい、神経質、不安)
次に上記2の「脳震盪の疑い」の症状とは。
・頭痛(プレーを続けることができない程度)
・ふらつき
・霧の中にいる感じ
・以下の質問に正しく答えられない(見当識障害・記憶障害)
→自分のチーム名を言いなさい
→今日は何月何日ですか
→ここはどこの競技場ですか
→今は、前半と後半のどちらですか
上記3のバランステストとは
「利き足でないほうの足を後ろにして、そのつま先に反対側の足の踵をつけて一直線上に立ってください。両足に体重を均等にかけ、手を腰にして、目を閉じて20秒間じっと立っていて下さい。もしバランスを崩したら、目を開けて元の姿勢に戻してまた、目を閉じて続けて下さい」
このテストで、
20秒間で、6回以上バランスを崩したら(下記のようなことが起こったら)、退場
・手が腰から離れる
・目を開ける
・よろめく
・5秒以上、元の姿勢に戻れない
これまでを、まとめます。
まず、「脳震盪の疑い」の所見が見られたら退場です。
また、「脳震盪の疑い」の症状があったら、これまた退場です。
どちらもなんともいえないなという時に、バランステストをして、上記に引っかかったら、やはり退場です。
これらは、その試合にマッチドクターがいる場合は、ドクターが判断します。
もしくは、日本体育協会公認アスレティックトレーナーで、さらに日本ラグビーフットボール協会の指定した講習を受講した有資格のヘルスケア専門家がいる場合は、その方が判断します。
もし、ドクター、ヘルスケア専門家ともに、居ない場合は、レフリーが上記の判断を行います。
で、その後、病院にかかってもらうわけですが、ここで強調しておきたいのは、脳震盪の場合、速やかに症状は改善していき、画像検査でも異常がみられないことが普通です。よって、翌日病院を受診したときはなんでもないことが多いのです。かかった病院の先生から、「脳震盪?うーん、大丈夫じゃないかな」と言われても、グラウンドで、「脳震盪の疑い」ということで、退場になっていたら、これは「脳震盪の疑い」として対応しなければならないということです。
指導者としては、大丈夫だったら、是非、次の間近に迫っている試合にその選手を出したいと思うでしょうが、選手の安全を考えて、絶対にそんなことはしないで下さい。
で、脳震盪/脳震盪の疑いと言われた選手のその後の対応です。
段階的競技復帰が必要になってきます。
翌日からもずっとドクターが帯同している状態(日本では、トップリーグを想定)という特殊な選手を除いて、基本的には、受傷後最低14日間は、いかなる運動も禁止して安静にします。その後、決められた強度に応じて徐々に運動強度を上げていきます。
競技復帰までは、最低受傷後21日かかります。その一歩手前で、医師の診断が必要になりますので、ここの辺りは、しっかりと確認してください。
日本協会のHPにも、脳震盪についてはアップされています。
IRB第10条 医学的関連事項「脳震盪」についてのレギュレーション改定に関して(通達)
繰り返しになりますが、例えば、チームの中心選手が、3週間試合にでられない、これは、心情的には、なんとか避けたい事と思います。しかし、選手の安全を考えて、くれぐれも、指導者が率先して、この規律を守るようにしてください。
また、こういった安全に対する取り決めを、周りでまだ知らない人がいたら、それとなく、教えて上げてください。
この記事をプリントアウトしてくれてもいいですし。
脳震盪だけでなく、「脳震盪の疑い」でも、段階的復帰となります。