第一回はやはり僕の専門分野である肝臓についてちょっとお話をさせていただきます.
よく健康診断の項目でAST(もしくはGOT),ALT(もしくはGPT)というものを目にしますよね.で,この数字が60とか70くらいになると,「肝機能,良くないですよー」なんていわれたりします.
では,このAST,ALTって何でしょう?これは肝臓の細胞の中にある酵素なんです.肝臓が壊れると,その中の酵素であるAST,ALTも細胞から出てきて血液の中に漂うんですね.
肝機能正常の人でも,AST,ALTが0の人はいません.これは常に新陳代謝が行なわれていて,正常の人も肝細胞は常日頃から,壊れては再生しているのです.
で,正常の人より壊れている量が多い人が,数値が上がってくるんですね.
じゃあ,次に数値が上がると何が問題か.実は誤解を恐れずに書いてしまえば,ちょっと数値が高いくらいというのはまず問題ありません.しかし,それが何年,何十年と続いていくと,肝臓がさすがに疲れてきて,慢性肝炎,肝硬変という状態になっていく可能性があるのです.
そして,このような進行する病気になる人というのはかなり決まっていて,90%以上の人はB型肝炎ウイルス,もしくはC型肝炎ウイルスというのが身体の中にいる人なのです.で,この肝炎ウイルスは採血をすれば,身体にいるかいないか,わかります.ですから,自分は病気が進行しやすいタイプか,それほどでもないのかを知るためにも,健康診断で「肝機能,良くないですよー」といわれた方は,一度は肝炎ウイルスのチェックをしておきましょうね.
次回,第二回は,「じゃあ,肝炎ウイルスがいた人はどうするの?」に続きます.