院長ブログ

そもそも新型コロナウイルス検査はするべきなのか(2020年3月 2日)

みなさま、こんにちは。
昨日、投稿した新型コロナウイルス検査に対する当院のスタンスについては、かなりご理解いただけたと受け止めています。
その後に投稿した、「マスクはちゃんとつけないと、むしろ全くつけないよりも良くないよ」の方は、レスポンスが薄くて残念でしたが。

さて、タイトルの通り、そもそも、検査がいつ、どこででもできるとしたら、それはするべきなのか。

1.インフルエンザ迅速検査について
まず、皆様にも馴染み深い、インフルエンザについて、考えてみます。
もうどこの外来でも、「じゃあ、調べてみましょうか」とグリグリと鼻に綿棒突っ込む検査はお馴染みでしょう。
「あ、A型、出ましたね。」となると、あなたはインフルエンザですね、と説明受けると思います。
では、迅速検査が陰性となった場合はどうでしょうか。
「うーん、検査のタイミングは早かったから、出なかったかも。」「熱が下がらなかったら、再度検査しますか」「検査が陰性でも、症状はインフルエンザだな〜」なんて言われたことはないでしょうか?
実際、翌日、もう一回検査をすると、陽性になることはしばしば経験します。
つまり、迅速検査が一度陰性であれば、あなたはインフルエンザではない、という事にはならないと言うことですね。
これはウイルス量が少なかったからかもしれませんが、インフルエンザが原因の症状があったとしても、検査キットで100%診断がつけられるものではないということを意味します。
ここまではわかりますよね。
これが、感度が何%かという話になるわけです。

実際、外来では、患者さんから、「念のために調べて欲しい」「陰性でないと、出社できない」と懇願されます。
職場から言われたから、ということで本人も必死です。
検査は絶対ではないんですよ、と何度、繰り返しても、「でも、検査して欲しいんです」と言われるので、根負けして検査をしてしまうこともあります。
これは、思いがけず陽性になったら、こちらの信用度は落ちるかもしれませんが、「インフルエンザ、出ちゃいましたね。まあ、出社、登校はやめておきましょうね。タミフル使いますか?対症療法でいきますか?」という感じになります。思った通り陰性であれば、「やはり、出ないですね。対症療法でいきましょう。」となるわけです。
正直な話をすれば、医療費がかかることですし、しないで済めばしたくない検査なのですが、街のお医者さんとしては、あまりに杓子定規にやって嫌われてもいけませんので、バランスを考えたりします。

2.新型コロナウイルスのPCR検査
では、同じことを新型コロナで考えてみましょう。
まず、インフルエンザでやるような簡易検査キットはありません。
やるとしたら、検体を取って(検体を取る方法は昨日、書いた通り、大変な作業となります)、適切な方法(理想的には-80℃に凍結して、検査する場所まで搬送)で検査場所まで持って行って、PCR(遺伝子を増幅して調べる検査方法)を行うわけです。
今、何時間もかかっていた検査を15分に短縮できる機械を導入!とかなんとか言われているあの検査方法です。
ですが、検査は短縮できたとしても、それ以前に適切にひっかけたいウイルスの部位を抽出するのに、手技に長けた技師さんが何時間もかけて分離したりするわけで、残念ながら、ポンポンと検査できるもんじゃないです。
そして、さらに大事なのは、迅速検査よりは感度が上がる可能性はありますが、やはり、感度100%にはならないんです。
鼻をグリグリしても、実はウイルスが主に増えているのは気管支の奥の方だったら、うまく検出できません。もともと増殖したウイルス量が少なければ、検体採取が不十分でも検出できません。だから、今の時点でも、2回陰性、3回目のPCRで陽性とか、中には7回目で陽性なんていう方もいらっしゃるわけです。
まあ、誰がどのように検査しても、病気を持っている人が検査をすれば100%陽性になるんであれば、これは検査する意味があるかも(それでも、検査するかは考えないといけないですが)。
つまりは、検査をして陰性であっても、それをもって、あなたは新型コロナウイルスがいないですよ、という意味にはならないと言うことです。
かかっていると心配という人が、検査に殺到したら、検査はあっという間にパンクして、重症肺炎の人が、鑑別が必要なんだけど、検査できませんという状況になることを意味します。
例えて言えば、トイレットペーパー、家にまだ十分あるんだけど、どうも足りなくなりそうだと買いだめすると、本当に今すぐトイレに行って用を足したい人がトイレットペーパー使えないという状態になるということです。いまいち、いい例えではないですが・・・

3.新型コロナウイルス検査の結果が出た後
そして、検査が陽性だと、どうなるか。インフルエンザも対症療法が中心なのですが、少しでも早く熱を下げたいと言う時に抗インフルエンザウイルス剤があるのに対して、新型コロナウイルスには特に特効薬はありません。
なので、新型コロナウイルス陽性となっても、重症肺炎などが疑われれば入院加療となりますが、それ以外は自宅で安静にするしかないのです。一方、それに付随するダメージは大きいことが予想されます。
今の日本だと、14日間隔離、家族も隔離、どこか行こうものなら、なんでコロナなのに外出したのか、となるのは間違い無いでしょう。
さらに、陰性であっても、それが実際は新型コロナがいないとう保証にはならないにしても、きっと陰性と言われたら、動き回りますよね、安心して。それは検査がそのとき陰性だっただけで、本当はウイルスを持っていたとしたらいかがでしょうか。高齢者に移して、その高齢者が重症肺炎になってしまう、そんな可能性もあるわけです。
つまり、検査をして、陽性であっても、はたまた陰性であっても症状があれば、自宅療養、ということがいいことはお分かりいただけますでしょうか。

さらにさらに、怖い話を。検査は感度という考え方の他に、特異度というものがあります。
ざっくり言えば、検査が陰性であれば正しく、その病気でないと言える数値です。これも100%はあり得ないので、本当は新型コロナウイルスが体にいないのに、検査では陽性と出てしまうということがあるのです。
これ、悲惨ではないですか?自分としては元気でピンピンして、さあ、大丈夫と証明しようと勇んで検査に行ったら、陽性と判定されて、また14日間、隔離!!


4.現時点での新型コロナウイルスの扱い
将来、新型コロナウイルスは、ただの風邪の原因ウイルスということになるのだと思うのですが、今の時期は、新規感染症として、特別な扱いを受けています。
今、封じ込めるんだ、さらなる拡大を防ぐんだと、みんなで躍起になっているところです。

上記の文章をよく、読み直していただいて、それでも検査を受けるべきか、熟慮してください。

新型コロナウイルス、現時点では、特効薬はありません。検査で陽性であっても自宅療養が治療の中心です。
悪化した場合には入院加療もありますが、特効薬はありません。
早期診断できるものでもなく、早期診断したとしても、重症化を予見はできません。
重症化リスクがあれば、その時点で、どういう対応をするか、かかりつけ医と相談でいかがですか?

最後に、繰り返しますが、当院では、現時点で、新型コロナウイルスの検査は受け付けておりません。
ご了承ください。